黒川洋一「杜甫」

 

だいぶ前に読み終わっていたのに、書き忘れていた。

 

高校の授業で習ったはずなのだけれど、当然のように記憶の彼方であった。杜甫だと思っていた詩が杜甫じゃなかったり、これ杜甫だったのかと驚いたり、自分の記憶力の衰えを痛感する。

 

授業のときは全然頭に入ってこないものだけど、自分から読もうと思って読めば、ちゃんと理解しようとするものだな、と改めて思う。国語の授業中に机の下で、文庫本を読むような人間だったからな。そりゃあ、授業内容を覚えていないわけだ。

 

なんかすごい苦労した人、という印象だけは残っていたが、この本を読んだら、すごい苦労、とかのレベルではなかった。そのせいか、全体的に寂しい感じの詩が多い気がした。それでも、寂しいのに、美しい景色が見える。漢詩はものすごい誇大表現が多い、と思っていたのだけど、この本の中ではあっさりとした情景描写で、すんなりと読めた。景色に意味を持たせるって、相当難しいと思うのだけど、解説を読んでみると、なるほどなあ、とすっと心に入ってくる。見ているもの、見えないもの、見たはずのもの、それらが組み合わさって、記憶と感情を表現できるのが羨ましい。