この人のことが、ずっと気になる。はじめて読んだときに、本の中に出てくるような人たちのことを描ける人がいるんだな、と思って、すごいほっとした気がする。
そういう以前に読んだ本とは違って、この本はちょっと不安な気持ちになる。読んでいる間中、ずっと不安だった。
この本の中に出てくる人たちは、いるいる、私の周りにもこういう人いるよ、と思って、すんなりと受け入れられるのだけれど、逆に現実に近すぎて、怖くなってしまうのかもしれない。
語り手の人も、語られる人も、現実にいるなあ、と思えるのに、何故かいないような気もしてくる。というか、全部妄想の話なんじゃないのか、と最後まで思っていたんだけど、出てくる人たちの会話を読んでいると、やっぱり現実なのだろうか。
帯に、何も起こらない、みたいなことが書いてあったけれど、しっかりいろんなことが起きるし、起きたはずなのに、最後には何もなかったみたいに終わる。そこがまた現実的すぎて、読んだあとも、なんだか怖くて、もやもやした気持ちが残る本だった。