丸谷才一「闊歩する漱石」

とりあえず、夏目漱石のことだけを書いて、本が1冊成り立っているのがすごい。

 

私はただのミーハーな夏目漱石好きだから、彼を分析しようとなんて思わず、ただただ面白いなあ、と思って読んでいるだけ。その面白さをこうして事細かに説明されると、夏目漱石がいかに古典や(当時の)現代文から多くのことを学んで、そこから実体験や環境、時代などを反映して、小説として昇華している、ということを気付かされて、ただただもう、その知識量と活かし方に圧倒される。それと同時に、こうして分析できるということは、つまりこの人の知識量もすさまじく、1冊で2人に圧倒される、というとんでもない本。

 

小説はゼロからできるわけではなく、過去の小説の様式や流行を知って、その小説を真似たり実験したりすることでできあがる、というような文章があって、そういえばそうだよなあ、と思うと、自分の書くものが新しくならないのは、学びが足りないのだな、とひたすら反省してしまうのだった。