映画「コンパートメントNo.6」

映画が始まった瞬間に、わーいい映画だな、と久々に思った。色の付いた画面に文字が並んでいるだけなのに、色合いもフォントも好みなのだから、映画の内容も好きに決まっている、というその予感は当たっていた。

 

基本的にはずっと長距離列車に乗っている2人の会話だけで、つまり特段ものすごいことが起きるわけではない。でも、私はこういう話がすごい好きで、主人公が最初と最後で立ち位置としては全然変わっていない、というのがいい。気持ちや感情が、ちょっと変化したり、波打ったりしても、でもやっぱり自分はここにいるんだよな、という確認できる感じ。

 

画面は、北極圏に近付くにつれて、深すぎる夜、濃厚な闇を映していくけど、不思議となんだか暗くはない。逆に心地がよいな、とさえ思う。普段、明るすぎる場所で暮らしているのかもしれない。本当の闇の中で、動物らしい本来のヒトとしての姿が浮かぶ。

 

長距離列車で相部屋になる、というだいぶ特殊な環境のせいで、安易に2人が近付いているような気もしたけれど、まあそれもいいかな。2人しかわからない言葉でラストをしめくくられて、なんだか気持ちよかった。