川上弘美「水声」、今村夏子「あひる」

 

水声 (文春文庫)

水声 (文春文庫)

 

 この人は、たぶん起こり得ないだろうなあということを、あまりにも普通に書くから、たまに怖い。

 

家族の形、みたいなことが解説に書かれていたけど、家族とも呼ばないものが描かれているように思われた。個人と個人が、ただ集まったような感じ。私には家族というものがよくわからなくなるときがあるから、この感想はあんまり参考にならないかもしれない。

 

「すいせい」と読むというのがずっとわからなくて、今解決した。

 

あひる (角川文庫)

あひる (角川文庫)

 

 最初に出た本を読んだときに、芥川賞とか受賞しそうだなあ、と思っていたけど、本当にそうなったので、よかったよかった。まだ読んでないけど(そしてたぶんしばらく読まないだろうけど)。

 

この人は、いつも社会に馴染めない人の方から話を書くなあ、と思っていて、それがとても沁みる。大人の社会への馴染めなさも、子供にとっての狭い世界での馴染めなさも、実際、本人にとっては深刻なことだ。馴染めないことを解決しないままの、なんだか超然としたような話の終わり方が、私は好きだ。

 

望まなくとも生まれたからには、社会に馴染めなくても生きていかなければいけなくて、馴染まないなりの生き方ってある、と思いたい。そういう世の中になってほしい、という、困難な願望でもある。