小説というものの中では、ばかもの、という存在は概して愛おしいものとして描かれるよなあ。より人間臭い、と思うからだろうか。でも、身近にこんなにばかものがいたら、やっぱり遠ざかってしまうものなんじゃないか。小説の中では、みんな優しい(遠ざかっていく人も、勿論いるけど)。
この本の中では、不自然だなあ、と思うことが自然に起きていく。あまりにも滑らかに落ちていって、浮上していくから、日常とはその繰り返しなのかもしれない。現実っていうのは、不自然の連なりというか、積み重ねというか、そんなふうにして、何にも劇的なことの起きていないように見える普通の人間の人生になる気がする。
この人の本を、2冊続けて。
右も左も、運動も革命も知らない時代に生まれた自分は、何を信じているのかっていうと、何も信じていないし、信じているものに裏切られたこともないなあ、と思ってしまった。
それにしても、双子って、周りから見ても不思議だけど、本人たちにとっても不思議な感覚なんだろうか。それよりも、思い込みで不思議を付加してしまうのかなあ。謎。