「山頭火句集」種田山頭火、「尾形亀之助詩集」尾形亀之助、「誠実な詐欺師」トーベ・ヤンソン
学生のとき、俳句や短歌を授業で読んでも、特に何も感じない自分だったのに、何故かこの人の「分け入っても分け入っても青い山」という句だけ、鮮明に記憶していた。そうして、山を見るたびに、私はいつも呟いていた。それなのに、どうしてもっと早く句集を読まなかったのだろうか。めちゃくちゃしっくりくる句が沢山ある。でもそれは、今だからこそ、読むべきだったのかもしれない。私が悩むこと、つらいこと、苦しいことが、もう既にこの人の句に書かれている。この人のような真っ直ぐさで、私は詩や小説を書けているだろうか。この人のように、私にも死に場所は見つかるだろうか。
この人が作った本をすべて網羅しているのかしら、たぶん。今まで読んだことのある本ももう一度まとめて読むことで、この人が詩人として生きたことを、また考えさせられる。現実的に、社会的に見たら、どう考えてもこの人は、ダメな人間、なのだと思うのだけれど、じゃあ詩人としてはどうなのか、と問われると、別に悪くはない、と答えてしまうかもしれない。所詮、文学なんて、そんなものなのだろう。詩人として生きた、と言えばたしかに聞こえはいいけれど、それで関わりのあった人たち、何より本人は幸せだったのだろうか。この人の詩を読める今を生きている私は、幸せと言わざるを得ない。
ムーミン以外の話を、ようやくはじめて読んだ。始終、冬の灰色の雲に覆われたような、暗いどんよりとした雰囲気の本だった。じっとりとしたまま進み、残り30ページくらいになったら、どう考えても悪いことが起きる予感しかしない、という気持ちになって、なかなか読み進められなかった。まあ、でも、冬が過ぎれば、否が応でも春が来るのだ。明るくはなくても、悪すぎる終わり方ではなくて、ちょっとほっとした。誰か一人に対して誠実であろうとすると、人ってその人以外には簡単に悪になれる。それは、本当に誠実と呼べるのだろうか。万人に誠実である、という姿勢は果たして可能なのだろうか。


