カフカ「審判」

 

審判 (岩波文庫)

審判 (岩波文庫)

  • 作者:カフカ
  • 発売日: 1966/05/16
  • メディア: 文庫
 

 読んでいる途中で何回か、私は安部公房を読んでいたんだったかな、と思ってしまった。いや、でも、年代的には安部公房の方が後だから、安部公房カフカを好きだったのかしら。そのへんはよく知らないけど、読んだ感じが似ていて、不安で奇妙な心持ちがしてくる。

 

昔、題名の訳が、本当は「審理」という方が近い、と見たことがあったのだけれど、たしかにそうだなあ。だけど、審理でもあって審判でもある、という気もする。最初から最後まで、何を審判されているのか、全然わからない。わからないまま、審判が下される。自分が何をしたのか、むしろ自分がしたことで審判されているのか、というか自分は本当に訴追されているのか。いや、自分は存在しているのか。そういうところまで、ぐるぐると考えが巡る。

 

そういえば、この話は未完なのだろうか。解説によると、未完というよりは、終わらない話、らしいが。そのぐらい唐突に終わる(終わらせられている)。