ルシア・ベルリン「掃除婦のための手引書」

 

掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集

掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集

 

 表題作が早稲田文学に載っていたときに、1回読んだだけではよくわからなくて、でもなんとなく気になっていた。去年、作品集が出たのを知って、少し経ってから本屋に行ったら、全然どこにもなくて、そんなに人気があるのか、とビックリしたのだった。だらだらしているうちに年末になり、ようやく買って、年が明けて読みおわる。

 

短編、ショートショートと言えるくらいの短い話がまとまっている。たぶん、原語で読んだ方がより軽快というか、リズム感のいい文章なのだろうなあ。日本語にはないリズムとかユーモアとかを感じとるのは難しい、と訳書を読むときは常々思う。あとは地名がわからないせいで、登場人物が移動したり、離れたところにいたりしても、距離感がつかめない。意外と距離感って、本を読むときに大事なんだなあ、と改めて感じた。

 

全体にわたって、どことなく悲しい、なんとなく寂しい。けど、はっきりとした悲しみや寂しさではなくて、物悲しいというか、うら寂しいというか、表現しがたいものがある。人が生きている間、ずっと悲しいわけでも寂しいわけでもないけれども、表面上ではわからない、誰の中にでも横たわっているものなのかもしれない。