今村夏子「星の子」

 

星の子 (朝日文庫)

星の子 (朝日文庫)

 

 この人の話の中には、いつも社会に馴染めないような人が出てくる。それを優しくもなく、厳しくもなく、今の現実の中での姿をそのまま描く。現実そのものは、いつでも人を抉ってくる。

 

自分の生きている世界って何だろう、と思う。自分が見ているもの、見えているもの、その範囲内でしか人は生きられない。自分が見ているものだけが本当だし、本物だし、信じられるものだ。他人が好き勝手にそれを、嘘だ、と決めつけられるものではない。

 

信じることは怖い。信じることは、それ以外を見ない、ということだ。それ以外の外のものを見はじめたときに、はじめて自分の信じているものが何なのか、わかるのかもしれない。