絲山秋子「ニート」

 

ニート (角川文庫)

ニート (角川文庫)

 

 ニートって言葉が出はじめたときに、学校でNEETの文字の意味を教えられた。簡単に言えば、教育を受けていなくて就業していない人、という意味だったと思う。この教育の部分が義務教育より先のことを指しているのだとすると、日本にはほぼニートは存在しないことになる、と教師は言っていた。でも、ほぼ存在しない、ということは、まったく存在しない、ということとは意味が違う。数パーセントでも、絶対に存在している、ということだ。そういう、他人から存在しないように扱われながら存在している、生きている人を、この人はよく書くなあ、と思う。

 

どんなに他人からダメだと思われても、自分自身が自分をダメだと思っても、どうしてだか生きている。どうして生きているのだろう。答えなんか、ない。この本の中にも、答えなんて一切ない。それでもやっぱり、みんな生きている(この本の中の人たちも、現実の中の私も)。生きていてもいいんじゃないか、とこの本を読むと思う。答えよりも、なんとなくの希望があっても、いいんじゃないかしら。

 

「へたれ」に共感する私は、へたれなんだろうなあ。なんとなく流されて、流れて、ここにいるのだなあ。