ミランダ・ジュライ「最初の悪い男」

 

最初の悪い男 (新潮クレスト・ブックス)

最初の悪い男 (新潮クレスト・ブックス)

 

 この人の本は、日本で出たらなるべく読もう、と思っていて、出遅れ気味だけれど、ようやく読み終わった。最初の本「いちばんここに似合う人」と、雰囲気は似ているのだけど、そりゃあ同じ人が書いたんだし、だけど、何か違う感じがする。最初の本は、するっと読めたのに反して、この本はものすごく読むのに時間がかかった。

 

半分以上読み進めても、全然はまりこめないし、好きになれないし、早く終わらないかな、と思ってしまう。たぶん、主人公と自分が似すぎているせいかもしれない。あまりにも似ていて、読んでいるのがつらい。たとえば、妄想をくりかえすところとか。妄想と現実があまりにも段差なく入り乱れて、どこからが妄想なのか、たぶんこの本の主人公さえわかっていない(主人公でさえそうなのだから、読んでいるこちら側にはまったく見当がつかない)。現実に殴られて、打ちのめされて、妄想に引っぱられて、妄想と生きて、でもやっぱり現実に生きている。ようやく少しずつ解放される、という瞬間、エピローグが一番妄想くさい、となって、ちょっと笑ってしまう。

 

それにしても、最初の悪い男、とはいったい誰なのだろう?この本の中に、男の人は数えるくらいしか出てこないし、主人公ときちんと関わる男もその中から数人しかいない。果たして、これは本当に、男、なのだろうか。