絲山秋子「薄情」

 

薄情 (河出文庫)

薄情 (河出文庫)

 

 この人の、他人というより、自分を含めたすべての人間を俯瞰で見ている感じが、好きなんだろうな、と思う本。主人公が自分のことを語っているはずなのに、自分から少し距離をとったところにいるような気がする。だけど、決して不在にはならない。結局、自分から自分がどれだけ距離を置こうとしても、いなくなることはできないんだなあ。

 

話は、ちょっとした田舎あるある、なのかしら。群馬が舞台。群馬には、友人を訪ねて、一度行ったことがある。関東地方に括られながら、山あいだし、海ないし、電車網はあまり張られていないし、道路ばっかりだし、みんな車にしか乗らないし…東京から離れた地方では、どこでもそうだよね、と宮城県に住む私は肯く。宮城県もだいたいそんな感じ。だけど、この話は群馬県でしか成り立たないんだろうなあ。どこでもそんな感じ、どこにでもある話、どこにでもある田舎の閉鎖的な感じ、でも、その土地の空気感が多分あって、この話の中の人たちが持って、放っているものは、群馬の感じ、なのだと思う。

 

私は、自分を自分で、ものすごく薄情だなあ、と思って生きていて、この本を読んでいても、ああやっぱりなあ、という気持ちになった。