川上弘美「ざらざら」

 

ざらざら (新潮文庫)

ざらざら (新潮文庫)

 

 ちょこ、ちょこ、とこの人の本を読むのだけれど、何と言えばいいか、安心感がある。たぶんきっと好きだ、という信頼感とでも言うのか。今回も、相変わらず好きだった。元々短編が好きだというのもあるが、この人の話の全体に漂う空気感が、いつもいい。

 

優しいとか、温かいとか、日常を暮らしていると、どうしても他人に対して感じにくくなる。それってつまり、自分自身が、優しくなれなくて、冷たいってことなんだろうけど。自分の中に本当はあるはずの、小さくなってしまった優しさを取り戻したくなる。どんなに平凡でも、ちっぽけでも、皆本当は、優しくて温かい世界で生きたいんじゃないのかなあ。