森絵都「クラスメイツ」

 

クラスメイツ〈前期〉 (角川文庫)

クラスメイツ〈前期〉 (角川文庫)

 
クラスメイツ〈後期〉 (角川文庫)

クラスメイツ〈後期〉 (角川文庫)

 

 私の十代前半は、この人でできあがっていると言ってもいい。そう考えると、二十年近く経った今でもこうしてこの人のYAを読めることを、ありがたや、と拝みたくなる。大人向け小説(というジャンルが存在するのかは知らんけど)を書いたら、もう二度とYA(ヤングアダルトというジャンル分けするのもどうかとは思うが、でもたしかに中高生に読んでほしいと思える本というものは存在する)を書かなくなる人もいる中、この人がいまだに中学生を主人公としてくれることは、本当にありがたさしか感じない。

 

ところどころに出てくる名台詞というか、金言というか、この人の本の中には、必ずいつも自分の心に引っかかってくる一文が出てくる。それに出会うために読んでいるのかもしれない。

 

二十四人のクラスメイツ全員、それぞれが、当たり前のことだけど、個性を持って、私に語りかけてくる。誰でもが経験する中学生という時間の中で、自分はこういう人だったな、こういう人いたなあ、と思い出されて、つらくなったり、笑ったり。そうそう、YAを読むって、この感覚だよなあ。勿論、現役中学生が読んでも、面白いだろうと思う。好きなあの人が実はこういう人かもしれないとか、好きになれないあの人が本当のところこう思ってるのかもしれないとか。他人のことを考えられるようになるために本を読むって、ちょっとある気がする。

 

この人の本の中に出てくる人は、本当にいい子ばかりだなあ。偉いなあ、いい子だなあ。でも、中学1年生だったら、実際、みんな、いい子なんだと思う。好きになれるかなれないかは、別の問題で。そう、私がこの本の中で唯一好きになれなかった子がいたのも、別問題。