能町みね子「逃北」

 

 この人の本を、どれから読もうか、と悩んでいるときに、この本が出ることを知る。曲がりなりにも東北に住んでいる者として、気にならずにはいられない。そして、収録してある対談の相手が宮城県出身の人、というのを見て、買うことを決意する。

 

どうでもいいことだけれど、東北の人ってたぶん、東北出身者の人をなんとなく応援している。出身県だけではなく、東北地方全体でひとつの仲間だと思っているところがある(その中で、仙台はわりとハブにされることもあるが)。だから、楽天イーグルスに東北ってついてても特に違和感はないし、甲子園のときは東北地方から出場する6つの高校全部を応援する(挙句北海道の高校まで応援していることもある)。こんなことを言ったら、南の方の人に「信じられない!」と驚かれたことがある。いや、むしろ、隣の県にそんなに敵対心剥き出しの方が、オレたちには信じられないんだけど…。

 

そんな東北に暮らす私にとっては、東北地方に逃げる、という感覚は、そりゃあない。私の家がよく車で出かけるから、というのもあるのかもしれないけど、東北地方は日帰りでちょっと出かけるところ、という感じ。久々にこの前、釜石に泊まったけれど(それもSL銀河に乗りたくて行っただけで、特に何かを見たわけでもない)、正直、ここで暮らしていくのは大変だろうなあ、という感想しかない。東北地方の人たちは大概、こんなところで暮らしていくのは大変だよ(東京から来た人なら尚更)、という気持ちがあって、他の地域から来た人に、なんで来たんだ、とものすごく訝しむ癖がある。ありがたいなあ、という気持ちよりも、おっかなびっくりな気持ちの方が先行するのはそのせいのような気がする。

 

こうして、北へ逃げたい、と思ってくれる人がいることは、ありがたい。でもやっぱり、ちょっと怖いなあ、とも思う。そう、北の人は排他的なのよ(そのぶん仲良くなれば、とても優しいのも事実)。