よしもとばなな「さきちゃんたちの夜」

 

さきちゃんたちの夜 (新潮文庫)

さきちゃんたちの夜 (新潮文庫)

 

 図らずも、短編続き。

 

この人の本を、ひたすら読んでいた頃があったなあ、思春期だったなあ、と読みながら思い出した。学校とか勉強とか、そういう見えるものの基準よりも、見えないけれど確かなものがある気がする、ときっと探していたんだろうなあ。今でも、見えないものを信じるのは、こうやって本をずっと読んできているからかもしれない。

 

この人の話には、今で言うスピリチュアルっていうようなものがよく出てくるんだけれど、都合がいいなあ、と思う反面、こういうことってそういうもんだよね、とも思う。人間って、突然そういう力を発揮しちゃうもんだ(少しだけ心当たりがある)。様々なさきちゃんたちが、それぞれの夜を、1日1日を過ごして、少しずつ越えていく。人の体は1人で時間を経過していくけれど、体の外側では、1人ではなくて、いくらかの人と関わって生きていく。そういう関わりの中で、体の内部が変化しているような、そんな気分になる本だった。