三島由紀夫「三島由紀夫レター教室」

 

三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)

三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)

 

 最近、私の中でちくま文庫が熱い(というほど読んでいないか)。この話は女性誌に連載していたらしく、軽い感じとちょっとした皮肉がチクチクと入っていて、他のこの人の話より全然読みやすい。この前読んだ「命売ります」もとても軽くて明るい感じだったし(死がテーマのはずだが)、ちくま文庫のチョイスがいいなあ、と思う。

 

本人が言っているけれど、手紙は1通の中で一度世界が終わる。一方的に話しかけているだけなのに、どんどん世界が広がっていくのが面白い。1対1であるはずの手紙の中で、複数の人間関係が入り乱れて、ひっちゃかめっちゃか。好き放題に、書く書く書く。手紙は自分本位かもしれないけど、それだけに感情が濃いなあ。登場人物5人それぞれの特徴が色濃く出た手紙に、くすりと笑って、時々ぞっとして。人間らしい手紙を、私も書きたい。