熊谷達也「迎え火の山」

 

迎え火の山 (講談社文庫)

迎え火の山 (講談社文庫)

 

 これってホラーなのかしら、そうなのかな。私が読めるくらいなので、そんなに怖くはないと思う(私はホラーというか、ビックリさせるような怖さが本当に嫌い)。霊が出てくるけど、それは人間と別物ではなくて、人間そのもので、結局人間が一番怖いんだよな。

 

日本人に限らず、人間は信じる信じないを別として、死後の世界はあるんじゃないか、と考えてしまうものなんだろうなあ。それはつまり、死ぬことが怖いから、ということなんだけど。意識や欲を持って、人間を人間たらしめているけれども、その多くは動物的ではない。生きることに必要なものが増えたぶん、死ぬことが怖くなっているのかもしれない、と思ってしまう。

 

ラストは少し納得できなかったところもあるし、予想できてしまう流れではあったけれど、この分厚い本を一気に読ませてくれる面白さはありがたい。東北に住んでいるからか、どうしても前のめりに読んでしまうところはある。

 

どうでもいいけど、月山って宮城県から山形県に行くとき、いつも通るんだけれど、この本を読んだら、通っていいのか心配になってきた。人間って、ときどき自然を超越できるかもしれないと思うところが、良くない。