ジョージ・オーウェル「1984年」

 

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

 

 1か月もかけて、ようやく読み終わった。内容のぶ厚さで言ったら、たぶん「動物農場」の方が濃かった。この話の中だと、かなり形式とか制度が凝り固まっていて、読む側もその枠に押し込まれる感じ。「動物農場」はその制度が固まる前の少しごちゃごちゃした感じが描かれているせいか、ドタバタとした喜劇として読める。でも、この本にはこの本の面白さもあるが。

 

最後の附録として書かれているニュースピークについての説明を読まないと、結構内容をとらえられない感じがある。先に附録読まないよ…。使用する言葉を狭めることで思考を狭める、というのは現代にも通じるところのように思う。みんな、略語が大好き。言葉で思考する人間に対するには、自分も多くの言葉を持つことが必要になる。だけど、思考停止する方が、楽だし、生きやすい、そんなふうな世の中に、今は見える。

 

ビッグ・ブラザーはいるようで、いない。いないようで、いる。こういう存在に支配されることを心地いいと思えるようになったら、人間は平和を手に入れるでしょう(まさかね)。

ジョージ・オーウェル「動物農場」

 

 ツイッターで目にして、気になったので読んでみた。意外と短い話だったのだなあ。後半は全部、開高健の文章だし、あんまりこの本の内容と深く関わっていない気がして(どちらかというと「1984年」に関する文な気がする)、これで「動物農場」というタイトルなのはどうなのか。まあ、話として入っているのは「動物農場」だから、いいか。

 

人間対動物、という構図かと思いきや、だんだんと動物対動物になっていく。ただ、本人たち(ここで人って書くとおかしいけど)は自覚がないけど。動物の擬人化、と言えば簡単なことだけれど、ここまで動物それぞれに個性を持たせて、役割を担わせている細かさがすごい(登場人物が結構多いのに)。

 

信念と野望は違う、と聞いたことがある。自分の外側に働きかける信念が、いつの間にか、自分の内側に向いて、自分だけの欲望を叶える野望へと変わっていくことは、権力を持つことの悲しさだと思う。もちろん、信念を貫きとおす人もいるかもしれないが(私は今まで出会ったことないが)。

 

それにしても、開高健の文章は難しいなあ。あまりにも理解できないのは、「1984年」を読んでいないせいでは…、ということでただいま格闘中である。

ミランダ・ジュライ「最初の悪い男」

 

最初の悪い男 (新潮クレスト・ブックス)

最初の悪い男 (新潮クレスト・ブックス)

 

 この人の本は、日本で出たらなるべく読もう、と思っていて、出遅れ気味だけれど、ようやく読み終わった。最初の本「いちばんここに似合う人」と、雰囲気は似ているのだけど、そりゃあ同じ人が書いたんだし、だけど、何か違う感じがする。最初の本は、するっと読めたのに反して、この本はものすごく読むのに時間がかかった。

 

半分以上読み進めても、全然はまりこめないし、好きになれないし、早く終わらないかな、と思ってしまう。たぶん、主人公と自分が似すぎているせいかもしれない。あまりにも似ていて、読んでいるのがつらい。たとえば、妄想をくりかえすところとか。妄想と現実があまりにも段差なく入り乱れて、どこからが妄想なのか、たぶんこの本の主人公さえわかっていない(主人公でさえそうなのだから、読んでいるこちら側にはまったく見当がつかない)。現実に殴られて、打ちのめされて、妄想に引っぱられて、妄想と生きて、でもやっぱり現実に生きている。ようやく少しずつ解放される、という瞬間、エピローグが一番妄想くさい、となって、ちょっと笑ってしまう。

 

それにしても、最初の悪い男、とはいったい誰なのだろう?この本の中に、男の人は数えるくらいしか出てこないし、主人公ときちんと関わる男もその中から数人しかいない。果たして、これは本当に、男、なのだろうか。

東直子「とりつくしま」

 

とりつくしま (ちくま文庫)

とりつくしま (ちくま文庫)

 

 なんとなく手に取ったのだけれど、こういう、なんとなく、というときって、意外と今の自分の気分に合ったものが手元にやってくるのかなあ。不思議なものだ。

 

死んだあとのことって、たいていの人は考えると思うのだけど(あれ、私だけかな?)、何かしらにとりつく、ということはあまり考えたことがなかった。死んだら何にとりつきたいか、と聞かれても、今の私は答えられない。誰かを、何かを見守りたいと強く思うことは、誰かと真剣に向き合うということなんだよなあ。

ヴァージニア・ウルフ「ヴァージニア・ウルフ短篇集」

 

ヴァージニア・ウルフ短篇集 (ちくま文庫)

ヴァージニア・ウルフ短篇集 (ちくま文庫)

 

 読んでいる間中、気が狂いそうになる文章ってあるんだなあ。嫌な記憶が甦ってくるような文章。文章に集中しようとすればするほど、自分の記憶が邪魔してくる。そして気持ちが悪くなる。これは誰にでも当てはまることではないだろうけど、あんまり明るい文章ではないことはたしかだ。

 

意識の流れを書いているらしいんだけど、そういう脈絡もないような自分の意識を通して見ている現実が書かれているのかしら。他人にとっては筋が通っていないようでも、たぶんこの話の中の人にとっては一本の筋が通っている。読み慣れないと、ちょっと呑みこむのに時間がかかりそう。