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木地雅映子「あたたかい水の出るところ」

 

あたたかい水の出るところ

あたたかい水の出るところ

 

久々に学生の話を読むと、とてもとても胸が痛くなる。都合よく話が進んでいくような感じもするけれど、それはこの主人公の持つ魅力とか、人間力のなせるところなのかなあ、と納得できる話。ただの胸キュンラヴストーリーではない。

 

沢山の人と同調できなくても、本当に好きなものを見つけたり、たった1人の同調できる人に出会えたり、そんな奇跡のために、生きていければいいのかもしれない。

トム・ジョーンズ「拳闘士の休息」

 

拳闘士の休息 (河出文庫 シ 7-1)

拳闘士の休息 (河出文庫 シ 7-1)

 

 拳闘士、というと、天才というか、才能のある人にスポットが当たるけれど、この本に出てくる人は、決して天才ではなくて、むしろ不器用で、生きることにさえ不器用で、打たれて打たれて打たれまくる。それでも、とにかく起き上がる。たとえ生きることに向いていなくても、人は生きていかなければならない。器用に生きていくことには才能が必要だけれど、とにかく生きていくことには才能はいらなくて、生命力だけが頼りなのかな、と思う。生命力に自信のない今の私には、みぞおちが痛くなる本だった。

 

読み終わるまで、短編集なのだとわからなくて、どの話がどう繋がっているんだ?どうなっているんだ?とずっと疑問に思っていたら、最後の最後の解説で短編だと知る。なんてこった。

「群像10月号」

 

群像 2016年 10月号 [雑誌]

群像 2016年 10月号 [雑誌]

 

 発売されて、なんとか紙版を購入し、それからずーっと読んでいたわけで。つまり、約半年は、だらだらと、寝る前にこれを読んでいた。かなりの分厚さと重さなので、どうしても出かけるときに持っていけなくてね…。

 

そんなわけで、かなりのボリュームだった。70年って、自分からは遠く思えるけど、こうやって1冊に凝縮されると、そう長くはない時間なのかもしれないな、と思えてくる。日本の文学の歴史だけを見れば、1500年以上はたぶんあるのだから、そのうちの70年間が見れた、ということになる。そう考えれば、短い。でも、濃い。

 

それにしても、70年前には三島由紀夫太宰治も生きていたんだなあ。同じ本の中に、死んだ人と今生きている人の文章が収まっているのが、不思議な感じだった。今から70年後、いやそれより、私が死んだときには、どんな作家が生まれているんだろう。

丸谷才一「笹まくら」

 

笹まくら (新潮文庫)

笹まくら (新潮文庫)

 

2ヶ月ぶりの更新になってしまった。ええと、あけましておめでとうございます…。

本を2冊同時に読む、ということをしているのだが、今の自分には無理な行動であった。でも、まだもう1冊読み終わっていないので、しばらくはこののろのろなペースで更新することになりそう。

この本は、わりとさくさくと読んでいる、と思っていたのだけど、2ヶ月も経っていた。時間の経過を感じさせない、文章の流れの中にいたからだろうか。

1人の人間が、別人として生きた過去と現在が対比されるように書かれているのだけれど、結局のところ、同一人物でしかないということを思い知らされる。対比も、分割も、実際はできなくて、何十年という1人の生きた時間は、すべて地続きなのだなあ。過去と、現在と、どちらが本物で、どちらが真実で、どちらが事実なのか。裏を返せば、生きている人たちは皆、嘘をついて、虚構に生きているのかもしれない。

 

映画「ジャニス リトル・ガール・ブルー」

 

ジャニス:リトル・ガール・ブルー

ジャニス:リトル・ガール・ブルー

 

 ジャニス・ジョプリンの音楽は、10年くらい前から聞くようになったのだけれど、テレビのドキュメンタリー番組なんかを見ても、この人のことを掴みきれなかった。映画をやると聞いて、もう少しわかるかなあ、と思って、観にいってみた。

 

けど、やっぱり、他人のことはわかるわけがないね。同じ時代を生きたわけでもなく、そのときの空気感を知れるわけでもなく、まして話したこともない人を決めつけることなんて、私にはできない。ただ、映像に残るジャニス・ジョプリンは、人に向けて無邪気な笑顔を向けるのだけれど、そのあとすぐに、悲しそうな、不安げな表情になる。それがすごく印象的だった。

 

とりあえず、見たことのないライヴの映像が見れて、よかった。もうちょっとライヴシーンが長くてもよかったけど。