カフカ、頭木弘樹「絶望名人カフカの人生論」

 

絶望名人カフカの人生論 (新潮文庫)

絶望名人カフカの人生論 (新潮文庫)

 

 これって絶望なのだろうか。この人にとっては、普通に考えたり思ったりしていることで、毎日の日常の呟きみたいなものなんじゃないのかなあ。別に絶望しているわけではない気がする。いや、勿論落ち込んで、絶望していると思っているときもあるだろうけれど。このぐらいのテンションが、通常営業という印象がする。

 

これだけネガティブなことを言われたら笑えてくる、と最初に書いてあるんだけど、私には共感というか、同意するところばかりが多くて、別に笑えるところはなかった。似たようなことを考えていた人がいる、とわかることは、心強いところはある気がする。まあ、ここまでひどくはないかなあ、とは思えるかもしれない。

川上弘美「水声」、今村夏子「あひる」

 

水声 (文春文庫)

水声 (文春文庫)

 

 この人は、たぶん起こり得ないだろうなあということを、あまりにも普通に書くから、たまに怖い。

 

家族の形、みたいなことが解説に書かれていたけど、家族とも呼ばないものが描かれているように思われた。個人と個人が、ただ集まったような感じ。私には家族というものがよくわからなくなるときがあるから、この感想はあんまり参考にならないかもしれない。

 

「すいせい」と読むというのがずっとわからなくて、今解決した。

 

あひる (角川文庫)

あひる (角川文庫)

 

 最初に出た本を読んだときに、芥川賞とか受賞しそうだなあ、と思っていたけど、本当にそうなったので、よかったよかった。まだ読んでないけど(そしてたぶんしばらく読まないだろうけど)。

 

この人は、いつも社会に馴染めない人の方から話を書くなあ、と思っていて、それがとても沁みる。大人の社会への馴染めなさも、子供にとっての狭い世界での馴染めなさも、実際、本人にとっては深刻なことだ。馴染めないことを解決しないままの、なんだか超然としたような話の終わり方が、私は好きだ。

 

望まなくとも生まれたからには、社会に馴染めなくても生きていかなければいけなくて、馴染まないなりの生き方ってある、と思いたい。そういう世の中になってほしい、という、困難な願望でもある。

獅子文六「悦ちゃん」

 

悦ちゃん (ちくま文庫)

悦ちゃん (ちくま文庫)

 

 あら、なんか表紙が可愛い(いつもブックカバーを付けて持ち歩くので、表紙をよく見ない)。

 

深く考えこまずに、悦ちゃんの歌のように、小気味よいリズムの中で読みおわることができる。最近嫌なことが起きたので、こうしてつらいことも、なんだか楽し気に乗り越えていく話が、ちょうどよかった。ちょっと嫌な場面も、どんどん読み進められる。この人の文章の感じが、好きなのかもしれない。

 

やや勧善懲悪っぽい、童話っぽい感じが、疲れたときにはよい。近頃は、あんまりそういう話がないからなあ。

コラム「北欧神話」

 

北欧神話 (岩波少年文庫)

北欧神話 (岩波少年文庫)

 

 前々から北欧神話が気になっていて、でも学術書みたいな難しい本ではわからないだろうしなあ、と思っていたら、岩波少年文庫という画期的な方法があったではないか。非常にわかりやすい。大人だからって、読んでいけないということはない。むしろ、とっかかりとしては一番いいのではないだろうか。

 

神話といえば、ギリシャ神話や、日本では古事記とか日本書紀(この2つはちょっと違うとも思うけど)なんかが有名だけれど、北欧神話もそのひとつ。昔から人間は、人間とはどのようにできたのか、とか考えていたのだろうか。昔の方が、そういうことを考えこむ時間があったのかもしれない。人間はどうしても、目に見えない部分(それは過去でもあるし、今ある見えない何かでもあるし、未来でもある)を、神様に預けたがる。人間はひ弱で、臆病で、大きな力があるなんて驕ってはいけない。北欧神話に出てくる神様だって、こんなにも弱くて臆病なところがある。でも、神様には力があるけどね。

 

北欧神話って、フィンランド以外の北欧の神話だって解説があったから、フィンランドにはフィンランド特有の昔話とかがあるのだろうか。探してみようかなあ。

岸本佐知子「ねにもつタイプ」

 

ねにもつタイプ (ちくま文庫)

ねにもつタイプ (ちくま文庫)

 

 この人が翻訳する本が好きなので、この人自身が書いた本はどうだろう、と読んでみた。エッセイと書かれていたんだけど、よく目にするエッセイだと思って手に取らない方がよいと思う。エッセイだと思いこんで読んでいたら、途中で疑問符だらけになった。小説とも違うし、小噺とでも呼んだ方がよさそう。

 

この本を読んでいると、そりゃあああいう本を訳すよなあ、と納得してしまう。ちょっと奇妙な世界を覗いてしまう人。見えていないけど見えるものだったり、見える人にしか見えないものって、あるんだよなあ。