筒井康隆「残像に口紅を」

 

残像に口紅を (中公文庫)

残像に口紅を (中公文庫)

 

 テレビで話題になったけれど、だんだん言葉がなくなっていく、という話。こうやって書くと、なんだか簡単な感じに見えるけれど、だいぶ複雑で面倒なことをしている。こんな面倒なことをしようとするのが、面白いなあ。

 

内容は、というと、唐突に変な人が出てきたり、無理矢理話を変えたり、ビックリする流れもある。中身があるのか、というと、そんなに中身は重要じゃないのかなあ、と感じてしまった。言葉がなくなっていく過程で、書いてみたい場面をどういうふうに書くのか、という実験なのかもしれないなあ。

ジョージ・ソーンダーズ「短くて恐ろしいフィルの時代」

 

短くて恐ろしいフィルの時代

短くて恐ろしいフィルの時代

 

 装丁のポップな感じ、登場人物たちの可愛いファンタジーな見た目とは違って、内容がとてもおどろおどろしい。童話のようにすぐに読めるのに、怖くて不快な人間の部分が、ひゅっと心に入ってくる。強くて、恐ろしいものに、惹かれてしまう人間の深層心理って何だろう。人間は善なんだと、神様は本当に思っているのだろうか。

ケン・リュウ「紙の動物園」

 

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)

 

 SF、と思って手に取ってみたら、自分にはファンタジーっぽく感じられた。でも、SFとファンタジーの違いって難しい気もする。SFファンタジーとも言うし。ジャンルなんて、分類したい人がしているだけなんだろう。

 

読んでいると、ずっと悲しい感じのする話。手放しで、好きだ、とは言えない。とにかく、知らないことが多すぎる。どうしてこんなに、知らないことが多いのだろう。

伊藤計劃「ハーモニー」「The Indifference Engine」

 

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

The Indifference Engine (ハヤカワ文庫JA)

The Indifference Engine (ハヤカワ文庫JA)

 

 すっかりこの人の本を読むことにはまっていたのだけれど、これでもう新しい小説を読むことはできないのか、と思うと、ただただ単純につらい。新しい言葉を、この人はどう発したんだろうなあ。

 

SFというのは、過去から見たもうひとつの未来、ということになるんだろうけれど、こうも今現在に近くて、この話に近付いていっている現実が見え隠れしていると、本当にゾッとする。この人に対してのゾッと、今現在生きている人間に対してのゾッ。この人はたぶん、ものすごく人間をポジティブに捉えていて、人は裏切りもするけれど信じるに値するものだ、と思っている気がする。この本を読んで、皆、人間を信じることができるか?自分を信じることができるか?

梨屋アリエ「夏の階段」、ガルシア・マルケス「エレンディラ」

 

夏の階段 (teens’ best selections)

夏の階段 (teens’ best selections)

 

 たまにこう、中高生が出てくるような本を読んでしまうと、ものすごくつらい気持ちになってしまう。児童文学よりは、YAと呼ばれるものの方に、大きく反応してしまう。まったく同じ経験はしていないとしても、誰しもが微かに感じたことのある感情が呼び戻されてしまうのかなあ。つらい。この感情が何なのか、というのがわかるまでの階段の途中は、本当につらい。登り切ったら、あれなんであんなにつらかったんだろう、と思うんだけれど。

 

エレンディラ (ちくま文庫)

エレンディラ (ちくま文庫)

 

 ちょうどタイムリーにノーベル文学賞が決まったときに読んでいた。まったくノーベルは意識してなかったんだけども。今まで読んだ本の中で、ちょこちょこ名前を見かけていて、そろそろ読む時期が来たのかな、と思って手に取った。

 

なんだろう、このよくわからない読後感は…。ファンタジーなのかな、と思って読んでいると、どうにも血生臭いし、現実味がありすぎる。だからなのか、時々怖い感じがある。たぶんこの人にとっては、すごく現実に近いところを書いているのかもしれない。南米の文化を全然知らないせいだろうか。ものすごい不思議な気持ちになる本だ。自分の外側に出てみないと、自分が生きている文化が変なのかどうか、本当にわからない。